コラム

辺野古移設が憲法違反?

河原昌一郎

 辺野古移設が何と憲法違反だと言う。平成31年1月24日に憲法研究者の有志なる130人が記者会見をして公表した声明によれば、辺野古移設は沖縄住民の民意に反して行われていることから、憲法が規定する民主主義や地方自治を侵害しているのだという。

  しかしながら、少し考えてみれば容易にわかることだが、辺野古移設は法に基づいて必要な手順を踏みつつ合法的に実施されており、憲法上の民主主義や地方自治といった問題とはそもそも無縁である。しかも、辺野古移設は国家の安全保障政策の一環として行われているものであるが、国家の安全を保障することは、国家の根元的な義務であり、他の何よりも優先されなければならない問題のはずである。もちろん、住民が補償もなく犠牲になっていいわけではないが、必要に応じて正当な補償がなされる中で住民の理解を得ていくほかはない。

  今回の憲法研究者の声明では、もとよりこうした事情には一切触れず、もっぱら辺野古移設が「住民の権利を侵害している」、「住民の意思に反している」ものとして一方的に決めつけ、そのことを憲法違反の論拠としている。憲法上の法的議論としてはあまりにも粗雑に過ぎ、これで憲法訴訟を起こすには無理があろう。130人もの憲法研究者がわざわざ発表するような内容でもなさそうであるが、何のためにこんな声明を発表したのだろうか。

  考えられることは、今回の公表が、プロパガンダを主たる目的としたものだったということである。実際に憲法違反であるかどうかはともかく、辺野古移設は憲法違反というイメージを国民に植え付け、辺野古移設への反感が国民の間で高まるようにする。2月24日の沖縄県民投票に影響を与えることも、当然、視野に入れられている。そして、そのために多数の憲法研究者を動員し、記者会見を行い、何らかの指示がなされたかのように各地方紙には一斉に同じ文面の記事が掲載された。

  懸念されるのは、こうした動きが外国の情報組織によって仕組まれ、実行されている疑いが強いということである。世論戦、心理戦、法律戦という三戦がまさに進行しており、その影響力がますます深まり浸透していることが危惧される。同様な動きが進むオーストラリアでは、こうした事態に対抗して、外国のスパイや国内干渉を防止する法律が昨年6月に成立した。日本においても、日本国内の撹乱、弱体化を目的とした今回のような動きに対して、日本人はもっと厳しい目をもち、また、必要な対策をとることが求められているのではないだろうか。


発表時期:2019年5月
学会誌番号:48号

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