矢野 義昭
1950年生まれ。大阪出身。
軍事研究家。元陸上自衛官。(最終階級:陸将補)
日本安全保障フォーラムの設立趣旨
日本の安全保障を取り巻く環境は近年、ますます厳しさを加えるとともに、その様相が複雑多様化しています。従来の戦争観では捉えられない、サイバー・宇宙・電磁波などの新領域での戦い、地下的サリン事件や新型コロナウィルスに象徴される生物・化学兵器の戦い、さらには人間の心理・行動に影響を与え誘導しようとする情報戦、心理戦、輿論戦も情報化の進展に伴い熾烈になっています。
このような複雑多様な戦いに備えるには、防衛・外交を主体とする従来の安全保障分野のみではなく、新領域でもある軍民両用の先端技術分野、憲法論、国体論、歴史認識等の法律、教育、メディアに関わる分野、経済、金融、エネルギー、科学技術等の経済・科学技術政策に関する分野の研究も必要です。
本会は、以上のような安全保障に関わる幅広い分野について歴史的な経緯や国内外の最新情勢を踏まえつつ、以下の二つを目標として活動してまいります。
ひとつは、日本の安全保障に関わる調査・研究を行い、その成果を政策提言として政策に反映するなど、安全保障分野のシンクタンクとして活動することです。
ふたつ目は、セミナー、インターネット等多様な手段による情報発信を通じて、国民一般の方に安全保障についての知識を普及し、安全保障意識の涵養に努めることです。
日本周辺の北東アジアは、世界をリードする経済力、先端技術力を持つ高度産業国家として、日本のほか、韓国や台湾が台頭してきたと同時に、米中露の三大核大国、軍事大国が直接対峙し、朝鮮半島と台湾海峡という二つの分断国家を抱える、世界最大規模の軍事力の集中地域にもなっています。
特に近年では民主主義国家と権威主義国家との対立という構造が鮮明となりつつあり、それぞれを代表する米中の対決の様相が強まっていますが、そうした中で、日本は民主主義国家の一員として共産党独裁主義中国と戦い抜く決意を持たなければなりません。中国の巨大な脅威を目前にし、日本の主権と独立、悠久の国土、秀でた歴史、そして世界第三位の経済力と優れた科学技術力といった現在の繁栄が守れるかどうかは、もとより今の日本人の決意と行動にかかっていることは申すまでもありません。日本の安全が保障されるか否かは、自今の日本のみならず、地域と世界の安全と秩序にも死活的影響を与えます。
残念ながら、戦後日本は安全保障問題を、リアリズムの視点から冷静かつ合理的に分析し対処する努力を怠ってきました。しかしながら、日本の周辺情勢が厳しさを増す中で、いつまでもそうしていることはできません。日本の安全保障の研究は、脅威の明確化とそれへの対応についての日本人のコンセンサスを得る上でも不可欠であり、日本の存続及び地域と世界の安全と秩序を維持するための喫緊の課題です。
このような問題意識に立ち、日本安全保障フォーラムは設立されました。皆様の御理解とご支援のほどを、心よりお願い申し上げます。
日本安全保障フォーラム
会長 矢野義昭
ほか理事一同