設立趣旨

巻頭言

日本は神話に遡る悠久の歴史を持っていますが、その国柄は世界の他国に類を見ない特別なものです。世界各国は、異民族の征服戦争により王朝の交替を経験してきたか、祖国を征服されて新天地に建国した歴史を持っています。しかし日本は、一度の王朝の交替もなく、男子一系の皇統のもとで、家族のような「大きな和」の精神を拠り所に、日本列島の豊かな自然の中で過ごしてきました。

日本人の信仰心は、自然神への畏敬、祖先霊への感謝、皇祖神への崇敬と言う三つの柱により支えられてきました。また仏教や欧米などの異質な文明を平和裏に吸収同化し、その精華を自らの文明の発展に役立ててきた歴史もあります。

しかし現在では世界の宗教は、ユダヤ教を源流とする一神教が主流となっています。一神教には異教の存在を許さない不寛容さと闘争の原理が根底にあります。近代以降は神を否定し唯物主義に立つ共産主義も唱えられてきましたが、その不寛容さと闘争原理はさらに先鋭化され、世界的な闘争は形を変えてますます激化しています。これからの世界には闘争原理に替わる共存の原理が必要です。

その点で、日本は「和」を重んじる国柄であり、闘争の絶え間のない世界に対して、異質な価値観を併存させ同化していく力を持っています。日本は、その独自の同化力の意義を発信できる可能性を秘めた、稀有な文明です。いま世界は、各国各民族固有の歴史に基づく文化や国柄を否定するグローバリズムやコミュニズムが横行しています。

現代に生きる日本人には、これらの力に抗して、日本の国柄を大切に守り伝える責務があります。それと同時に、日本固有の価値観、生き方を世界に発信していくことも求められています。

安全保障の目的は、国家の主権と独立を守ることにありますが、それは同時に固有の価値観、生き方、歴史と文化を守ることも意味しています。日本安全保障フォーラムが、日本と世界の歴史と趨勢を踏まえた高くかつ幅広い視点から、日本の安全保障について研究を重ね、日本と世界の未来の平安と共存への道を探り発信するための、価値ある場となることを期待しています。

日本安全保障フォーラム 名誉顧問

東北大学名誉教授 田中英道

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