河原昌一郎
今年2月下旬、韓国ロッテが韓国政府に自社所有地をTHAAD配備地として提供したことによって、中国でロッテ商品の不買やロッテ店舗のボイコットが巻き起こった。ロッテに限らず、韓国商品の不買運動やイメージ低下によって現代、サムスンといった韓国を代表する企業の中国での売上げが落ち込み、これら企業の経営悪化とともに、韓国経済の低迷が報じられている。
ところで、中国の外国商品不買運動は、今回は韓国が対象となったが、従来は多くは日本を対象として行われてきた。特に戦前においては、五・四運動以降、執拗に陰湿で悪質な反日活動とともに実施され、軍部が満州事変を引き起こす一因ともなったとされる。
このように中国の行う外国商品不買運動は、無視できない効果をもっているが、その遣り口は戦前から現在まで基本的に変わっておらず、中国特有のものがある。以下でその特色と見られるものを指摘しておこう。
一つは人民の自発的意思によるのでなく、政府の宣伝、扇動、操作による官製のものであるということである。ただし、その政府は必ずしも一枚岩ではなく、内部の隠れた闘争に利用されていることが多い。
二つは不買運動と併せて必ずそれ以外の手段で対象とする企業にいやがらせが行われることである。今回、韓国ロッテの店舗は中国当局による税務調査を受け、多くの店舗が閉鎖された。
三つは、多くの場合、煽られた人民によって破壊・暴力活動が行われるということである。をともなう。2012年反日デモのときの日本企業への襲撃は記憶に新しいところであるが、今回も韓国人への暴行等の事件が起こっているという。
このように、中国の外国商品不買運動は、経済面だけでなく、心理的圧迫や恐怖心の植付けといった手段が併用されるのである。こうした遣りようはまさに中国独特であり、中国文化のなせるわざであろう。中国に進出している企業は、こうした中国のカントリーリスクを十分に認識し、こうした事態が起こっても耐えられる企業構造にしておくことが求められるのである。
発表時期:2017年11月
学会誌番号:42号